こんにちは。いよいよ今年も夏がやってきました。一昨年、昨年は極端な猛暑が続き、熱中症の救急搬送数もぐっと増加した2年間でした。勿論、直射日光による照りつけの厳しい季節でもあります。今回は日光による「眼の日焼け」について、お伝えしていきたく思います。
「眼の日焼け」と聞いて、「日焼けするのは皮膚だけでしょう?」とお思いの方々もいらっしゃるでしょう。ですが生活の中では、この暑い時期の海水浴や、逆に真冬のスキー・スノボでの「雪目・雪眼炎(紫外線角膜炎)」については耳にしたことがあるかもしれません。眼も日光によって健康障害が発生するのです。急性期・慢性期、それぞれどんな健康障害があるかと対処法等について、見ていきましょう。
眼は下図のような構造からなっています。それぞれの場所がどのように働いているかは、カメラの構造に置き換えると理解しやすくなります(表)。
すべての光は眼の前方正面の表層にある角膜を通って入ってきます。角膜は眼の最も前方にあり、透明な組織です。その光は光量が多すぎると、虹彩=カメラの絞りによって調節され、水晶体=レンズを通って眼の中に入りピント調節の上、網膜=フィルム上で像を結びます。このときに、紫外線の大半は角膜と水晶体で吸収されるため、急に多くの紫外線を浴びると、角膜と水晶体に大きな影響が生じます。
<急性期>
➀ 紫外線角膜炎・・・昼間に強い紫外線を浴びたのち6~10時間程度経過してから症状が出始めます。とはいえ、大部分は24~48時間程度で自然治癒していきます。症状として、眼の充血、ゴロゴロするような感じ、涙が出る、眼に強い痛みがあり、眼を開けていられない、眼がかすむ等があります。
※電気性眼炎=溶接作業など溶接の光を見ることで発生する紫外線角膜炎をいいます。適切な目の保護具を使用することが重要です。
<慢性期>
➀ 白内障・・・紫外線が多く当たって、元々透明な水晶体が白く濁るのが白内障です。網膜まで光が通りにくくなるため、眼がかすむ、細かい文字を見にくい、かすんだところに反射して光がふわっと散乱してまぶしく感じる(特に夜間の対向車のヘッドライト等)という症状が発生します。日常生活に支障をきたす場合は、水晶体を人工のレンズに入れ替える手術をすることになります。
➁ 翼状片(よくじょうへん)・・・より強い紫外線を浴びていると 翼状片を発症することがあります。日本では農家や漁業に長年携わってきた人などで見られます。白目が三角形に黒目を覆うような形で、外側から黒目の中心へと伸びてきて、瞳孔にかかってしまうと見えにくくなります。異物感や、角膜の表面に凹凸が出来てしまうので、正常にみたものの像を結べなくなる不正乱視になる場合があります。
➂ 瞼裂斑(けんれつはん)・・・白目の上に黄色い斑点や出っ張りが発生します。ドライアイになりやすく、炎症を起こしたりします(隆起している部分の涙が凹凸ではじかれてしまうため)。
眼から紫外線が入ると脳がそれを認識し、皮膚のメラニンを増加させる働きがあります。美白になりたい人は肌だけでなく眼を守る必要があります!
➀ UVカットサングラス・・・紫外線を遮ります。しかし、色のついているレンズにより視界が暗く感じられるため、むしろ瞳孔が開いてしまう場合があります。こうなると普通の眼鏡型では横の隙間から周囲で反射してきた光が、瞳孔が開くことにより眼の中に入りやすくなってしまいます。ゴーグル型のものを使用するのもよいでしょう。レンズの色だけでなく、ゴーグルや眼鏡型のサングラスを使用する時にはUVカット率をしっかりと確認しましょう。
➁ UVカットコンタクトレンズ・・・眼鏡型のサングラスでは防ぎきれない紫外線をカットできるので、補助品として有効です。
➂ 帽子・・・夏ならではの麦わら帽子、チューリップハット(“女優帽”的なもの?)といった、つば部分が広い帽子で目元を日陰にしましょう。つばの幅は7cmほどあると良いかも?
<処方薬>
処方薬は、主に診断がついている一つの疾病に対する効能に特化して使用する場合が多いのが特徴と言えます。緑内障と花粉症、など合併しているときはそれぞれの治療薬を合わせて(といっても一つを点眼してから次のものを点眼するまでは約5分間置く)使用します。
(例)緑内障治療中に、目に異物感があって目脂が出るので受診したら、ものもらい=細菌感染であることが分かった。⇒いつもの緑内障の目薬に、抗生剤の目薬を併用する。
➀ 緑内障治療点眼剤・・・眼圧を下げて視神経のダメージを生じにくくします。定期的にきちんと使用していくことが大切です。
➁ 抗菌・抗ウイルス点眼剤・・・抗生剤・抗ウイルス剤は、中途半端な使用の仕方で耐性菌をつくってしまうと大変なので「症状が落ち着いたらすぐにやめる」というのではなく、医師の指示を守って必要な期間はしっかり継続していくのが重要です。
➂ 副腎皮質ステロイド性抗炎症点眼剤・・・抗炎症作用が強いものの、感染症には弱くなりやすいので、抗菌剤の目薬と併用することもよくあります。(副腎皮質ステロイド・抗菌/抗生物質配合点眼剤を含む)
➃ その他・・・非ステロイド性抗炎症点眼剤、ドライアイ・角膜治療点眼剤(人口涙液など)、抗アレルギー点眼剤(抗ヒスタミン薬など)、白内障・眼精疲労など様々な点眼剤があります。
<市販薬>
市販薬では、「疲れ目」「目のかすみ」「コンタクトレンズ使用中にゴロゴロと不快感がある」など、症状に対して対応する複数の成分を総合して含んでいることが多いです。また、1回分ずつの量に分かれて使い切っていく形であるとか、コンタクトレンズを装着したまま使用できるものとそうでないものがあったりします。コンタクトレンズ使用中の点眼が禁止のものは、レンズに付着して目の表面に残り続けるとむしろ目の不具合につながることがあるため、コンタクトレンズ使用中の点眼可・不可は説明書をよく見て確認する、または薬局で薬剤師に相談するようにしてください。
市販薬では防腐剤が入っているものもあり、開封から3か月位で使うことになっています。一方、処方薬では1ヶ月くらいで交換しなければなりませんので、注意が必要になります。
<目薬使用上の注意>
追記:眼だけによらず、紫外線による健康影響について知りたい方は、当センターの過去のコラムもぜひご参照ください!
『紫外線と健康』(桝元医師):https://www.kimiken.com/column/%e7%b4%ab%e5%a4%96%e7%b7%9a%e3%81%a8%e5%81%a5%e5%ba%b7
「健康さんぽ107号」
※一般財団法人君津健康センターの許可なく転載することはご遠慮下さい。