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新型コロナウイルス感染症と
インフルエンザの同時流行に備えて

医師 長尾 望

新型コロナウイルス感染症流⾏で非常事態宣⾔が出されてから、早くも半年を迎えようとしています。健診の受診者さんでも、テレワークや臨時休業が増えたとおっしゃる⽅が多くみられます。

また対策としての外出自粛等によって運動の機会が減った影響なのか、体重増加が認められることもしばしばです。そのなかで季節は移り変わり、ここ数日では気温もすっかり下がってきています。

こうなると気になってくるのがインフルエンザの流⾏です。毎年インフルエンザは年末頃からちらほら発生の報告が出始め、年末年始の全国的な人の移動後に流⾏がみられるのがこれまでのパターンでした。今年はどうなるでしょうか。

■ 新型コロナウイルス感染症について

(図1)

まず、新型コロナウイルス感染症について、これまでの間で分かってきたことを整理しましょう。

新しい感染症の危険についてニュースが全世界に広がり、各国とも様々な対応を取ってきていますが、アメリカやブラジルなどではそれぞれ600万人、400万人を超える感染者が発生しています。一⽅アジア諸国は欧米に比べると感染者・死亡者数が少ない印象で、日本では9 月23日時点で約78,000人の感染者、死亡者は約1,500人となっています。(図1) 新規感染者数は非常事態宣⾔により一旦減少した後、再び増加に転じ7月末〜8月第1週目頃にピークとなりました。(図2)

(図2)

入院数も同様ですが、重症者数は7月上旬から増加傾向が続いていたものの、8月下旬頃から減少してきています。クラスター発生等については地域差が生じています。PCR検査の実施数は増加していますが、直近では検査実施に対する陽性率は2.9%で4月上旬の8.8%と比較するとかなり低い数字となっています。

感染者の内訳も、流⾏当初は⾼齢者が多く重症となるケースが多かったですが、6月以前以後で比較すると、20〜30代の健康な若年層の感染者の割合が増えています。重症化しやすいリスクとしては、65歳以上の⾼齢者であること、⾼⾎圧・糖尿病・慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患等の基礎疾患があること等が挙げられています。(図1)

■ インフルエンザの流⾏季節に備えて

こういった状況の中で、新型コロナウイルス感染症と類似の症状(発熱、呼吸器症状等)を来すインフルエンザの流⾏季節となり、国では5つの政策目標と7つの取り組みを掲げています。

*感染症法関係について

現在は指定感染症として特別な扱いをしています。具体的な内容としては、類似症患者・無症状病原体保有者へも対処を適用していたり、健康状態の報告や外出自粛等の要請をしていることがそれに当たります。

今後はインフルエンザの患者増加が⾒込まれる時期となります。そのため、新型コロナウイルス感染症については、重症者への対応を重点化していくこととし、無症状者・軽症者は宿泊・自宅療養といった⽅向になるかと思われます。

*検査体制、医療提供体制について

インフルエンザの簡易抗原検査キットに加え、新型コロナウイルス感染症についても簡易抗原検査キットを⼗分に⾏き渡らせる⽅針です。そうして一般の医療機関でも発熱者の対応をしてもらうよう要請しており、体調不良時の相談先が保健所から各かかりつけ医になるようにして⾏くと思われます。(図3)

(図3)

ただし、各医療機関では発熱者とそれ以外の患者への対応を分けて実施することになるので(入室の導線をわける、診療時間を区切る等)、まず電話で相談することが重要となりますのでご注意ください。

*治療薬・ワクチンについて

インフルエンザワクチンは約3,000万本=1回打ちで約6,000万人分を準備。従来通り重症化予防として10月上旬から65歳以上に接種を推奨、10月後半からは医療・介護の従事事者、基礎疾患のある⽅、妊婦、乳幼児〜⼩学2年生に接種を推奨していくことを予定しています。新型コロナウイルスのワクチンは令和3年前半に全国⺠に接種できるよう量を確保することを目指して動いているものの、実際に接種できるのは徐々になるであろうと考えられ、優先順位をつけて実施していくことが考えられています。今のところ、患者の治療に当たる医療従事者や救急隊員、65歳以上の⾼齢者、基礎疾患を有する者等が優先されると思われます。また、感染防止の効果があるのかの実証には時間がかかることから、接種開始の時点でワクチンは重症化予防を目的として実施されます。(図4)

(図4)

また治療薬については、抗ウイルス薬のレムデシビル、抗炎症作用のあるデキサメタゾンが承認されており、今後も研究開発の⽀援や迅速な薬事承認審査を⾏っていく⽅針です。

■ 一人ひとりができることをこれからも続けていきましょう

新型コロナウイルス感染症とインフルエンザ流⾏季節に備えて、一人ひとりができる対策を油断せずに、引き続き実践を心がけていきましょう。対策は新型コロナウイルス感染症でもインフルエンザでも同様です。基本的 な感染予防対策をとりましょう。

「健康さんぽ88号」

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