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夏の日本、海や川などのレジャーで出会う危険生物と対処法

医師 長尾 望

今年も夏がやってきました。職場の近くでも木々が青々と茂っていたり、レジャーで山や海に行かれる方も多くなると思います。今回はそんな自然の中での危険な生物と対処法の紹介です。

草原・森林・山・川などに潜む 危険生物

◆ マダニ

◎ 生息場所:マダニは通常2~3mmの大きさで、平地(近所の公園でも!)から山中まで広く生息しており、民家のすぐそばの茂みの中や野生動物が多く出没するような山道などの葉の裏に潜んでいます。

◎ 症状:葉の裏から宿主の皮膚に取り付き咬みつきます。口器を固定するため、濡らしたり圧迫したりしても取れません。無理に引っ張ると口器が皮膚に残ってしまいます。数日間吸血し、パチンコ玉状のサイズまでぱんぱんになるところりと落ちます。

◎ 応急処置:咬まれてすぐは指ではがすことも出来ますが、1日以上経ってしまうとはがれにくくなるため皮膚科で除去してもらう必要があります。

◎ 対処:

マダニに咬まれないために

肌を露出しない格好でさらに開口部はふさぎましょう。そのため暑くなるので、熱中症に注意して活動することが重要です。また、イヌやネコなどのペットにもマダニは咬みつくので、イヌは散歩やドッグランなどから帰るときには、全身の毛をかき分けてチェックしてから室内に入るようにしましょう。

マダニに咬まれたら

咬まれてすぐなら手で取り除けますが時間が経っていたら、皮膚科に受診しましょう。また、2週間ぐらいは体調不良が発生しないか、気にして過ごしましょう。もし体調不良が起きたら、早めに内科を受診して「マダニに咬まれた」ということを必ず伝えましょう。

◆ スズメバチ類(オオスズメバチ、キイロスズメバチ)

◎ 生息場所:オオスズメバチは、森林の土中や木の根元などに巣を作り樹液に集まります。近年は市街地近くでも見られます。体長27~38mmで人間の親指くらいの大きさです。キイロスズメバチは、都市周辺で増加しており、木の枝や軒下、屋根裏などに巣を作ります。働きバチは17~25mmで黄色みが強いです。

◎ 症状:刺されると全身の蕁麻疹、口の周囲や舌の腫れ、胸部の圧迫感や腹痛が起こり、吐き気、下痢などの消化器症状が出ることもあります。さらに危険な場合はアナフィラキシーが現れた時で、血圧低下や呼吸困難などで死に至ることもあります。蜂に刺されてから15~30分以内に起こるようです。

◎ 応急処置:ハチがまだ飛んでいるときには10~20mほどそっと離れて避難します。退避するときに手で払う動作をしないことが大切です。またショック症状の有無に限らず、ポイズンリムーバーで毒を吸い出した後は患部をよく水洗いすることが大切です。

◎ 対処:黒色に反応するので、衣服は黒色を避けます。同時に髪の毛の黒色を隠せるように、黒色以外の帽子をかぶるのが良いでしょう。整髪料や香水にも寄ってくるので、山・森林に入るときにはそれらの匂いのするものはつけないほうが良いでしょう。

◆ チャドクガ

◎ 生息場所:ツバキやサザンカなどツバキ科の植物につきます。山林より都市部の生け垣にあるツバキなどでよく見られるようです。4~6月、8~9月の年2回産卵しますが卵から成虫までのすべての状態で毒針毛を持ち、死骸でも毒は維持されるので触らないようにします。

◎ 症状:毒針毛(顕微鏡での確認が必要なほど微細な毛)に触れると痛み・腫れ・かゆみの症状が出ます。毒針毛に触れた直後からかゆみと腫れが見られ、1~2日後にかゆみの強い赤い発疹が出ます。かゆみは2~3週間と長期に持続します。また引っ搔いてしまうと虫と接触しなかった部位へも症状が拡がるので掻かないことが重要です。

◎ 応急処置:セロハンテープやガムテープなどで触れた辺りをそっと抑えて毒針毛を除去した後、強い流水で洗い流しましょう。かゆみ・発疹に対しては抗ヒスタミン薬の入ったかゆみ止めが効きますが、アンモニア(虫刺され部位への塗り薬などに入っています)は効きません。

◎ 対処:チャドクガの毒針は風に乗って飛んできて皮膚に付着することもあるので、近くへ寄らないこと。刺されたら、ガムテープなどを張り付けて毒針を除去して患部をよく洗います。ふわふわした毛のついたものが葉っぱについていても触らないこと(チャドクガの卵の可能性あり)。死骸でもつまむときはティッシュを厚手に(5~6枚)束ねたもので上から押さえて取る、樹木からの除去の際には枝葉ごと切り取ってポリ袋などに二重に入れて捨てましょう。

◆ マムシ

◎ 生息場所:マムシは体長約40~65cmで銭形の文様があり、山裾の谷間、比較的明るい里山の水辺、湿地帯や川辺に住むことが多いようです。登山道から外れて、けもの道の方へ入り込まないよう要注意です。

◎ 症状:おもに神経毒・出血毒などがあります。噛まれた部位の激しい痛みや腫脹、出血などがみられます。

◎ 応急処置&対処:咬まれたら、再度襲われない位置まで逃げて距離を取りましょう。蛇の種類を模様などから特定します。流水でしっかり患部を絞り洗いし、一刻も早く病院へ行き治療を受けてください。

※ その他に、毒ヘビでは本州・四国・九州に70~120cmのヤマカガシ、南西諸島(鹿児島・沖縄)に100~200cmのハブなどもいます。

参考:国立感染症研究所「マダニ対策、今できること」より

 

海・海岸などに潜む 危険生物

◆ カツオノエボシ

◎ 生息場所:カツオノエボシは体長5~10cm、10~50cmに達する触手を持っています。台風通過後や海が荒れた翌日などに沿岸部に漂着したり、浜に打ち上げられたりしています。

◎ 症状:刺されると電気ショックを受けたような痛みを感じます。刺されたところは赤く腫れて線状のミミズ腫れとなりますが、重篤な場合は頭痛、吐き気、呼吸困難などが現れます。二度目以降ではアナフィラキシーによって亡くなる場合もあります。

◎ 応急処置&対処:腫れたところに触手が残っていないかを確認してください。ある場合は刺激しないようにピンセットなどで取り除きます。また、砂浜に打ち上げられて死骸に見えても、毒性はそのままですので絶対に触らないようにしましょう。

※ そのほか、海ではヒョウモンダコ、ゴンズイ、等々の危険な生物が他にもいます。基本的に派手な模様をしているものは毒がある可能性があるので「触らない・食べないこと!」また、山菜やキノコを素人判断で食べるのも危険です。

 

「健康さんぽ103号」

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