皆さんは秋の味覚といえば何を連想されますか?私は真っ先にサンマを思い浮かべます。
調理方法は塩焼きにすることが多く、特にハラワタの部分が好物です。しかし、新鮮なサンマであればやはり刺身が一番です。さすがに生でハラワタは食しませんが・・・。刺身に塩焼きと美味しく頂いていますが、実はそれってリスクを背負ってサンマを食べていることになります。そのリスクとは・・・寄生虫による食中毒です。近年、流通経路の発達や複雑化によりサンマからアニサキスに感染する症例が増えています。
魚介類に寄生している線虫の仲間で、大きさは2~3㎝で色は半透明白色。渦巻きの状態で内臓や内臓付近の筋肉に寄生しています。虫というだけあって、成虫~虫卵~幼虫~成虫という発育史があります。まず、海生哺乳類(クジラやイルカ等)の腸内に寄生した成虫が産卵し、排泄物と一緒に海水中に放出され孵化します。孵化した幼虫はオキアミなどのプランクトンに寄生し、このプランクトンをエサとしたサケ、サバ、イワシ、ニシン、イカそしてサンマ等の魚介類内臓に寄生します。
そして、この魚介類をエサとした海生哺乳類の腸管でまた成虫になり産卵と繰り返されます。ヒトの体内では成虫になれないため、サンマ大好きな私がアニサキス症を発症した場合は幼虫によるものとなります。
アニサキス症は、魚介類に寄生したアニサキスが生きたまま経口摂取された場合に発症します。多くは約2~3週間で自然に死滅し体外に排出されますが、稀に消化管壁に食いつくものがいます。その時に激痛や嘔吐を伴う症状が現れます。嘔吐物が胃液のみで下痢がないことが一般的な食虫毒と異なります。寄生部位によって胃アニサキス症、腸アニサキス症、腸管外アニサキス症などに分類されます。また、蕁麻疹などのアレルギー症状がみられることもあります。重篤な症状として血圧の低下や呼吸状態の悪化などアナフィラキシー症状を起こす場合があります。ということなので私の場合、単にアニサキス症が偶然にも発症していないだけかもしれません。ラッキー!!
日本人は刺身や寿司など海産魚介類を生で食べる食文化が強いため、諸外国と比べて発生リスクは高いと言えます。一番の対策はアニサキスが寄生した魚介類を食さないことです。また、加熱や冷凍で感染リスクを低下させることができます。加熱なら60℃で1分以上、冷凍なら長時間(厚生労働省の指導ではマイナス20℃以下で24時間)といわれています。しかし、アニサキスは塩や酸に強く、酢漬けや塩漬けといった非加熱の調理方法では、死滅させることができません。刺身や酢漬け、塩漬けで調理する際には、明るい場所で切り身の表面を十分に観察しアニサキスが付着していないことを確認し、食べる際にはよく噛んで食べましょう。
「健康さんぽ80号」
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