一般財団法人君津健康センター一般財団法人君津健康センター

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インプラントの話

医師 赤星 みどり

初めてインプラントを経験しました。差し歯にしていた前歯が折れて、修復不可能な状態になり、抜歯する必要がでてきました。25年以上持ちこたえた差し歯なので、寿命と思ってあきらめるしかありませんでした。その後どうするか。入れ歯かブリッジかインプラントか、選択肢はこの3つしかありません。目立つ前歯だから入れ歯は論外、ブリッジは両側の健康な歯を削らなくてはならないので、これも却下。となるとインプラントしかありません。

✽ インプラントのメリット・デメリット

インプラントは、人工歯根を埋めて、その上に人工の歯冠をかぶせるので、本来ある歯と見た目が変わらず、またしっかり噛めるので、違和感がありません。手入れも普通の歯と同様の歯磨きで構いません。デメリットは、人工歯根を埋めるのに外科手術が必要なこと、費用が高額になること(30万円~50万円)、治療期間が長い(半年~1年)ことです。費用が高額なのは保険適用外の治療になるためです。

✽ インプラントの流れ

抜歯後の待機(約3か月)インプラント1次オペ(インプラント体を埋め込む手術 その後3~5か月待機)オペ(インプラントの入り口を歯茎から出す処置アバットメント(支台)の装着)人工歯の装着  ※アバットメント:歯冠とインプラント体を連結している部分

✽ 実際やってみて思ったこと

とにかく次のステップに行くまでの待機期間が長く、仮歯の生活は結構辛いものでした。前歯だったので、食事をするとすぐに取れてしまうのです。毎週のように再装着のために歯科医院に通っていました。幸か不幸かコロナの流行で、皆がマスクをしていたので、何とかごまかせましたが。結局、仮歯生活が終わるまで、半年以上かかってしまい、あまりにも長かったためその歯を避ける癖が抜けず、いまだに前歯でしっかり噛むことができずにいます。インプラント体の埋め込み時は、局所麻酔で痛みはないとはいえ、ドリルで骨を削る振動が伝わり結構なスリルが味わえます。恐怖心の強い人のために、静脈麻酔で眠った状態で処置する方法を用いている歯科クリニックもあります。

✽ インプラント後のケア

長い時間と高い費用をかけて入れたインプラントなので、できるだけ長持ちさせたいですよね。インプラントの寿命は10~15年と言われていますが、口腔ケアやメンテナンスが必須です。普通の歯と同じように、毎日の歯磨きと定期的な歯科検診が重要になってきます。

✽ 8020(ハチマルニイマル)運動

厚生労働省と日本歯科医師会が提唱したもので、80歳になっても20本以上の歯が残っていれば、自分の歯で食事を楽しめるというものです。2022年の達成率は51.6%です。因みにこの運動が始まった1989年の達成率は、わずか7%でした。インプラントの経験から1本の歯がいかに大切か身にしみました。寿命が来るまで、自分の歯で美味しいものを沢山食べたいものです。皆さんもどうかご自分の歯を大切に!

「健康さんぽ101号」

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