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健康コラム君津健康センターの医師・スタッフから、
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トイレが近くて困っていませんか?

医師 石井 雅子

泌尿器とは、尿をつくり、老廃物を体外に排泄する器官の総称で、腎臓、尿管、膀胱、尿道が含まれます。男性だけにある前立腺も、その一つ。ちょうど、膀胱の下にあって、内部を尿道が通る胡桃の大きさほどの器官です。

排尿のしくみとは?

排尿のシステムが正常にはたらいている時、私たちは特に意識することなく、膀胱に尿を数時間蓄え、ある程度たまるとその尿を残らず外へ出していますが、これは、膀胱の筋肉と尿道の筋肉の「緩む」と「締まる」の動きが、自律神経のはたらきで絶妙にコントロールされているからなのです。

自律神経には、緊張している時にはたらく交感神経と、リラックスしている時にはたらく副交感神経があります。膀胱に尿がたまっている時は、主に交感神経がはたらき、膀胱の筋肉は緩んで尿を蓄え、反対に尿道の筋肉は締まって尿が漏れるのを防ぎます。尿が150ミリリットルほどたまると、膀胱から脊髄の神経を通して「たまったよ」という信号が脳に送られ、「尿意」を感じますが、限界というところにくるまでは、大脳が「まだ出してはだめ」という信号を膀胱へ送るため、私たちは排尿を我慢することができます。そして、トイレへ行き尿を出そうと思うと、脳が「出してよい」という信号を送ります。ここで副交感神経が主にはたらき、尿道の筋肉が緩み、反対に膀胱の筋肉は締まって尿を押し出し、尿が排出されるのです。健康な成人では、1回の排尿量は300ミリリットルほどで、約30秒で膀胱が空っぽになるのが普通です。

さっそく、下図(↓)のアンケートに答えてみてください。

合計点は何点でしたか?質問3の点数が2点以上で、かつ全体の合計点が3点以上の人は、過活動膀胱(OAB ; Overactive Bladder)の可能性があります。

また、合計点数が3点以上5点以下は軽症、6~11点は中等度、12点以上は重症です。1人で我慢せずに、医療機関に相談してみてください。

過活動膀胱とは?

前述のアンケート項目にある通り、尿意切迫感・昼間頻尿・夜間頻尿・切迫性尿失禁のうち、尿意切迫感が週1回以上あり、なおかつ頻尿や尿失禁などの症状を伴うものです。日本人の40歳以上の男女10人に1人はこの症状を経験していると言われており、小生が調査した千葉県近隣でも同数の方がお悩みでした。自覚症状と問診(OABSSアンケート)で診断を行います。

医療機関で行う主な検査として、尿検査(血尿や細菌が混じっていないかをみます)や排尿記録(頻尿の程度や尿量をみます)、超音波検査(膀胱に結石や癌がないか、男性だと前立腺の大きさなどをみます)などがあります。

過活動膀胱と診断されたら、薬物治療を行います。すぐにお薬の効果が現れるわけではありません。お医者さんとよく症状を相談しながら、治療をしていくとよいでしょう。また、この病気は寒い冬や、ストレスの多い環境にいるときに悪化する傾向があります。症状の波に惑わされず、不要な心配はしないでください。

◆◇◆ 日常生活で気をつけること ◆◇◆
❖身体(特に下半身)を冷やさないようにしましょう。
❖便秘に気をつけ、肥満があれば改善しましょう。
❖ビールなどのアルコール、お茶やコーヒーなどのカフェイン類、刺激の強い食べ物を控えましょう。
❖水分のとり過ぎに注意しましょう。なお、血管の病気のある方は、主治医とよく相談して水分のとり方を決めてください。
❖適度な運動をしましょう。
❖外出時などは、早めにトイレに行くようにしましょう。

前立腺をお持ちの男性に限ったお話し・・・

過活動膀胱と前立腺肥大症の違いについてです。過活動膀胱は「突然我慢できないような強い尿意(尿意切迫感)が起きる状態」のことで、この状態を引き起こす原因の一つが前立腺肥大症です。一般的に、高齢男性の過活動膀胱の原因として一番多いのが前立腺肥大症と言われています。病院で検査をして、前立腺肥大症があるときは手術療法で過活動膀胱症状が改善することがあります。また、前立腺癌でも同様の症状がでる場合があります。血液検査でPSAを計測し、前立腺癌の可能性があるときは、さらに精密検査を行います。

女性の方へ

女性の排尿トラブルは、今回の過活動膀胱以外にも尿漏れを訴える方が多数います。その主なものが、腹圧性尿失禁です。強い腹圧がかかるような動作をした時に尿漏れをおこします。例えば、咳やくしゃみ、大笑い、走る、重たいものを持ち上げる、階段の昇り降りなどの動作です。40歳以上の8人に1人はこの腹圧性尿失禁があると言われています。とくに、出産を経験した人、閉経した人、肥満のある人などに多くみられます。このような症状を認めたときは、薬物治療でなくて骨盤底筋体操や手術療法を行います。専門の医療機関を受診しましょう。

○● 日常生活でできるトレーニング ●○●

① 膀胱訓練:尿意を我慢する練習を、短い時間から始めて、少しずつ時間を延ばしていきます。
✽ トイレへ行くのを1回だけ我慢してみましょう。
✽ 最初は5分くらい我慢し、1週間ほど続けます。尿意を感じるたびにではなく、1日のうちの時間や回数を決めて、少しずつ始めてもいいのです。
✽ 10分、15分と、我慢する時間をだんだん延ばしていきます。
✽ 最終的に2~3時間我慢できるようになれば、目標達成です。

② 骨盤底筋体操:弱った骨盤底筋を鍛え、筋力をつけることで、臓器が下がるのを防ぎます。また、肛門や腟を締める訓練をすることで、尿道を締めることができ、尿漏れの症状を改善できる可能性があります。過活動膀胱や腹圧性尿失禁に効果があります。
✽ 尿道・肛門・腟をきゅっと締めたり、緩めたりし、これを2~3回繰り返します。
これによって骨盤底筋が鍛えられます。
✽ 次は、ゆっくりぎゅうっと締め、3秒間ほど静止します。その後、ゆっくり緩めます。これを2~3回くり返します。
✽ 引き締める時間を少しずつ延ばしていきます。
✽ 1回5分間程度から始めて、10分~20分まで、だんだん増やしていきましょう。
✽ 基本姿勢でできるようになったら、いろいろな姿勢で上記の体操をやってみましょう。
通勤途中や入浴中や家事をしながらでもできるようになるでしょう。

最後に

排尿トラブルは身近なもので、決して一人で我慢しなければならないものではありません。信頼できるお医者さんと巡り合えれば、明るい気持ちで安心して毎日が過ごせます。一度、勇気を出して相談してみてください。

Thank you for アステラス製薬

「健康さんぽ65号」

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