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メタボリックシンドロームを防ごう!
- 病気を防ぎ、今日からできるダイエット -

医師 五阿弥 雅俊

明けましておめでとうございます。新年をいかがお過ごしでしょうか。いよいよ平成最後の年となりますが、皆様それぞれ新年の抱負や達成したいことがあるかもしれません。

さて、お正月というと、普段よりもより食べたりお酒を飲む機会も増え、また帰省したりご自宅で普段よりもゆっくり過ごされた方も多いと思いますが、その中でこれまでの普段の習慣を見直す良い機会もあったのではないでしょうか。新年の目標として、「今年こそは痩せたい」「夏までには引き締めたい」「健診で引っかかったので改善したい」と決意を固めた方もいらっしゃるのではないかと思います。

私も昨年の夏、自分の健診結果を見て、腹囲が「メタボ」の基準にひっかかってしまったのをきっかけに食事を見直すことにしました。それまでにも、以前はいていたズボンが入らなかったり久々に会った友人に「太ったね」と言われることが度々あったりと、なんとかせねばと思っていつつもなかなか取り組めずにいたのですが、たまたま大学の先輩や同期の集まりで「来年までには痩せます!」と宣言し、それ以降食事に気を付けるようになりました。年末の健康診断では無事ダイエットに成功することができました!

そこで今回、腹囲とメタボリックシンドロームについて紹介させていただきます。

〇メタボリックシンドロームについて

メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドロームという言葉は皆さんも聞いたことがあるかと思いますが、メタボリックシンドロームは別名「内臓脂肪症候群」とも言われ、内臓脂肪(腸や胃などの周りに付いている脂肪)が多くなっている状態を表します。焼肉のホルモンを思い浮かべると、その様子がイメージしやすいかもしれません。

メタボリックシンドロームになるとどうなる?
内臓脂肪が多いと聞くと、イメージとして体重が増える・コレステロールや中性脂肪などが高いといったことがまず思い浮かぶかと思いますが、単に脂肪の蓄積や体重の増加というだけでなく「血管への負担」「糖尿病にかかりやすくなる」といったことにもつながります。血管への負担とは、血管へのダメージが続いたり動脈硬化が進んだりすることを指し、血管への負担が続くと血管がつまりやすい状態となります。

また、糖分は私たちが生きる上で必須の栄養素であり、足りないと仕事がはかどらなかったり、気力がわかなかったりといったことが起こります。逆に血液中の糖分が多い状態が続くと血管にダメージを与えてしまい、血糖値が高いこともまた「血管への負担」の要因となります。さらに血圧が高いと血管に圧がかかってダメージを与え、血液中の脂質が多いと血管の壁に脂肪がたまり動脈硬化へとつながります。これらの要因によって血管が詰まりやすい状態となり、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気が起こりやすくなります。

健康診断でわざわざ痛い思いをして採血をしたり血圧を測るのは、これらの血管への負担をかける要因がどのくらいなのかを知るためです。

〇どこからがメタボリックシンドローム?

では、どのようにメタボリックシンドロームかどうかを判断しているのでしょうか?

先ほど、私は健診で腹囲がひっかかってしまったとお話しましたが、腹囲の基準は性別によって異なり、男性:85㎝、女性:90㎝となっています。また「血管への負担」、「糖尿病になりやすいかどうか」を見るために、①脂質、②血圧、③血糖の3つにも着目します。

これらの中で最も重要なのは「腹囲」です。この腹囲が基準を超えているかどうかということが、メタボリックシンドロームの基準の必須項目となっています(①~③については、腹囲に加えて「この中から2つ」が当てはまればメタボリックシンドローム、「この中の1つ」が当てはまればメタボリックシンドローム予備軍となります)。その理由は、腹囲がお腹の中に蓄積された内臓脂肪の量を表す良い指標であり、脂質異常症・高血圧・高血糖などの血管に負担をかける要因も進行させるためです。

腹囲の正しい測り方

腹囲は測り方を誤ると値が大きく違ってきます。お腹に力を入れたり引っ込めたりせず、また深呼吸をしたり息を吸っている時には正しい数字が出なくなってしまいます。メジャーは簡単に手に入りますので、ダイエットに取り組まれる際には、体重計だけでなくぜひともお腹周りを測ってみてはいかがでしょうか。

〇具体的な食事について

ここからはメタボリックシンドロームを改善あるいは予防し、ダイエットにもつながる食事の方法についてご紹介したいと思います。ダイエットには大きく分けて「食事量に気を付ける」、「運動量を増やす」の2つの方法があります。まずは、「食事量に気を付ける(摂取するカロリーを減らす)」ことについて見てみましょう。

1日に必要なカロリーはどのくらい?
1日に消費するカロリー(推定エネルギー必要量)は、年齢や性別、日常的な活動量によって異なります。体をよく動かす若い男性であれば1日3000kcal程必要ですが、デスクワーク中心の中年男性では2300kcal前後、主婦の中年女性では1850kcal前後です。年齢・性別・日々の活動量を考慮したエネルギー量については、下記にて当てはまる項目を入力すると自動的に計算することができます。

https://www.med.or.jp/forest/health/eat/01.html

あなたの健康を応援する健康の森(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」を元に作成)

食品に含まれるカロリー量を知る!
1日に摂取するエネルギー量が消費するエネルギー量を上回ると体重が増え、下回ると体重は減ります。そこで、普段食べている食品がどのくらいのカロリーに相当するのかを知ることができると、自分の体重をコントロールすることができます。例えば、ポテトチップスの袋の裏面を見ると、一袋あたりおよそ250kcalです。1日に2~3袋も食べてしまうと、概ね一食分のカロリーを摂ってしまうことになり、さらに3食の食事をすれば簡単に消費するエネルギーをオーバーしてしまうことがわかります。このように食品表示に載っているカロリー量に注意する習慣がつくと、食べすぎや間食のしすぎを防ぐことができるのです。

なお、お菓子やコンビニで売っている食品にはカロリー量が表示されていますが、スーパーやレストランによっては表示されていなかったり、家庭で料理する場合にはカロリーがわかりづらかったりします。このときにとても役に立つのが『毎日の食事のカロリーガイド』という本です。日常的によく食べる食品・料理について、食品の写真と一緒にカロリー量や塩分量が載っており、例えば「日清カップヌードルには〇〇kcal」「チキンラーメンには〇〇kcal」「コンビニのおにぎり1個で〇〇kcal」といったように、とても具体的に食品とそのカロリー量が載っており大変便利です。また家庭で作るおかずについてもだいたいのカロリーがわかります。普段食べている食品のカロリー量を意識するようになると、いずれ本を見なくても「この食品を食べるとだいたい何kcalくらいだろうか」と見当がつくようにもなります。

また、お酒についても載っており、例えばビール350ml缶1本で150~200kcalなど、もしかすると皆さんが思っている以上のカロリーが含まれています。飲み会などではついつい飲みすぎてしまいますが、カロリーを意識し、適度に飲んでいただきたいと思います(節約というメリットにもつながりますし、肝臓をはじめ身体に負担をかけずにすみます)。私は、この本はダイエットの “バイブル”と思っているのですが、一つだけ欠点があります。様々な食材がとても美味しそうに載っているため、読むと食欲が増してしまうという点です。

〇運動について

運動で脂肪を燃焼させるには、ウォーキング・ジョギング・サイクリング・水泳などの有酸素運動が効果的です。自分に合ったやりやすいものを選びましょう。きついと続かなかったり、逆に負荷が軽いと脂肪燃焼には時間がかかるため、「中くらい」と感じる強さの運動を1日30分以上するように心掛けましょう。ちなみに運動は1日に何度かに分けても脂肪燃焼効果があり、例えば10分の運動を1日3回に分けることでも充分効果が得られます。また週あたりの回数としては、30分以上の中等度の運動であれば週3~4回するとよいでしょう。何より、無理なく続けられるということが一番大事です。もし何か治療中の病気(特に心臓や骨・筋肉の病気)がある方は、運動内容・運動時間や強度について主治医の先生にご相談ください。

以上、メタボリックシンドロームと腹囲、そして私がおすすめするダイエット方法について紹介させて頂きました。私自身、入らなくなったズボンもはけるようになり、非常に気になっていたお腹まわりもすっきりとし、日々の食習慣を少しずつ改善することが大きな成果につながるのだなと実感しました。

もしダイエットを考えているという方は、食品を買う際にカロリー表示を一度見られてみてはいかがでしょうか。また積極的に出かけたり階段を使うようにするとよいでしょう。こまめに腹囲や体重を測ることで努力が数字として表れてくると思いの他楽しく取り組めるようになります。

厚生労働省の『e-ヘルスネット』( https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/ )には、食事・メタボリックシンドロームだけでなく、運動、お酒やタバコ、歯の健康、こころの健康についての情報も紹介されていますので、参考にしてください。

最後に、私事で恐縮ですが今年は「平成最後の日(4月30日)までに腹筋を割る!」ことを新年の抱負としたいと思います。今回ご紹介させて頂いたことが、もし皆様のご参考になれば幸いです。この1年が皆様にとって健やかな年となることを願っております。

「健康さんぽ81号」

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