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乳がん検診について

医師 赤星 みどり

乳がんは、日本人の女性に最も多いがんで、若い年齢で発症するのが特徴です。年齢別にみると、30歳代後半から増え始め、40歳代後半から50歳代にピークがあります。乳がんで亡くなる人は2014年には1万3千人を超え、この20年間で約1.7倍になっています。しかし、早期に発見して適切な治療をすれば、10年生存率は95%以上と高くなっています。また、乳がんは自己触診でしこりに気付くことができますので、普段から自分の乳房の状態を把握することが重要になります。また、早期発見のためには、自覚症状がなくても定期的に検診を受けることが大切です。

乳がんの症状

乳がんの症状としては、図のことが挙げられます。乳がんのしこりは1㎝くらいの大きさになると触れるようになりますが、ごく初期の段階ではしこりとしては触れません。しかし、乳がんを放置しているとリンパ節や他の臓器に転移しやすいため、少しでも違和感を感じたら乳腺外科を受診して検査を受けることをお勧めします。

自己触診

乳がんは、しこりに自分で気付くことで早期発見ができます。生理前は乳腺全体が張ってしこりが分かりにくくなりますので、生理終了後、数日経ってから、お風呂に入った時などに触れる習慣をつけるとよいでしょう。閉経後の人は、毎月日にちを決めて行いましょう。乳がんのしこりは、硬くゴツゴツしていますが、定期的に自分でチェックすることで、乳房の変化に早く気付くことができます。

乳がんのリスクのある人

乳がんの発症には、女性ホルモン(エストロゲン)が関わっていて、エストロゲンの分泌される期間が長いと乳がんのリスクが高まります。図のような項目に当てはまる人は、乳がんにかかるリスクが高くなります。

【図1】乳がん検診の流れ

乳がん検診の流れ

一般的な乳がん検診は、問診のあと医師による視触診、その後マンモグラフィか超音波検査を行います。検査の結果、乳がんが疑われる所見があり要精査となった場合は、乳腺外科を受診し、MRI検査を追加したり、さらに針を刺して組織や細胞を取る検査を行って診断を確定します。

マンモグラフィ検査

乳房専用のレントゲン検査のことで、乳がん検診で最もよく用いられる画像検査です。圧迫板で乳房をはさみ、上下、左右方向から1枚ずつ撮影します。乳房を圧迫するため多少の痛みを伴います。特に生理前は乳房に張りや痛みを強く感じる場合があるので、生理終了後4~5日経ってから検査を受けるとよいでしょう。

マンモグラフィの画像では、乳腺は白く脂肪は黒く写ります。若い人は乳腺が発達していて脂肪が少ないため、全体が白く写り、白く写る病変を見つけにくくなります。従って、マンモグラフィは40歳以上の人に適していると言えます。

若い人の場合は超音波検査を受けることが勧められます。40歳以上の人でも、乳腺密度の高い人は超音波検査を受ける方がより病変が分かりやすくなります。また、妊娠中の人や妊娠している可能性のある人は受けることができません。

マンモグラフィは、腫瘤(しこり)や乳がんの初期状態の微細な石灰化を写し出すことができるため、乳がんの早期発見に有用です。石灰化とは、乳管の中にカルシウムが沈着することによって起きる変化のことを言います。がん細胞の増殖の過程で、一部が壊死しその部分に石灰化が生じることがあります。しかし、石灰化が見つかったとしても必ずしもがんが疑われるわけではありません。がんとは関係のない乳腺症などによる良性の石灰化もよく見つかる所見ですので、結果判定が要精査でなければ特に心配いりません。

乳腺超音波検査(エコー検査)

乳房に超音波(エコー)をあて、はね返ってくる反射波を画像化した検査です。乳房表面にゼリーを塗って、その上からプローブと呼ばれる機器を当てて乳房内部を写し出します。痛みはなく、体への負担の少ない検査です。

マンモグラフィと違って、微細な石灰化を写すことには適していませんが、触診では検出できない小さな病変を見つけることができます。X線を使わないので、何度でも検査を受けられ、妊娠中でも検査が可能です。乳腺超音波でよくみられる良性の所見として、乳腺症、乳腺のう胞、乳腺線維腺腫(良性のしこり)などがあります。のう胞はほとんどは良性ですが、ごくまれに乳がんの可能性もありますので、要精査となった場合は精密検査が必要です。

【図2】マンモグラフィと超音波検査の比較

マンモグラフィ 超音波検査(エコー検査)
利点 乳腺の全体像をとらえることができる
微細な石灰化を検出できる
撮影方法が定められており、過去の画像と比較しやすい
X線を使わないため被ばくがなく、繰り返し検査できる
痛みがない
乳腺が発達している人や若い人に適している
小さなしこりをみつけやすい
妊娠中でも検査ができる
欠点 痛みを伴うことがある
乳腺が発達している場合、しこりの検出が難しい
妊娠中やその疑いがある時は検査ができない
微細な石灰化の検出ができない
がん以外の良性の所見も見つかりやすく、再検査となる割合が高くなる
術者(検査する人)の技量に左右される

具体的な検診の受け方

自治体(市町村)が行っている乳がん検診は、対象が40歳以上でマンモグラフィ主体の検診となります。自治体によっては30歳代に超音波検査を実施しているところもあります。詳細については、所属している自治体に問い合わせされた方がいいでしょう。企業健診や家族健診では、オプションとして乳がん検診を追加できるようにしている場合が多いようです。

一般的には40歳以上はマンモグラフィ、40歳未満は超音波検査が適しています。40歳以上の人でも、乳腺症があり乳腺密度の高い人は、超音波検査の方が適しています。また、マンモグラフィと超音波検査を1年ごとに交互に受けるという方法もあります。どちらの検査も一長一短がありますので、どの検査を受けた方がよいか分からない場合は、診察時に聞いておくとよいでしょう。

検診後のフォローアップ
マンモグラフィや乳腺超音波の検査結果で所見ありと記載されていても、ほとんどはがんではなく心配のいらないものです(例. 良性の石灰化、乳腺症、乳腺のう胞など)。軽度所見で経過観察となっていたら1年に1回の検診で様子をみるようにしましょう。要精査となった場合は、乳腺専門医のいる病院を受診して精密検査を受ける必要があります。要精査でも実際乳がんの可能性はそれほど高くなく、要精査=乳がんではありませんが、やはり早めに受診されることをお勧めします。

「健康さんぽ69号」

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