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健康コラム君津健康センターの医師・スタッフから、
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人生100年時代 私たちはどう生きるか ~年代ごとの健康の工夫~

医師 長尾 望

君津健康センター季刊誌『健康さんぽ』をご愛読頂きありがとうございます。君津健康センターは、1988年に新日本製鐵(株)君津製鐵所 健康管理部門と(社)君津製鐵所 安全衛生協力会 健康管理部門がそれぞれ母体より分離・統合され、労働衛生専門機関として独立した機関です。今年で早くも35年、この『健康さんぽ』も第100号となりました。我々がともに歩んできた平成から今にいたる国の健康施策として重要になるのが「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」です。

❖ 健康日本21について

「健康日本21」は平成12年すなわち2000年に、日本では現状の平均寿命が長いものの、同時に高齢化が進んでがんや生活習慣病有病者が増加していることなどを問題視して定められました。それらの課題に対し、まず2010年までの目標として掲げられ、その後2008年には健康増進法に基づく国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針が一部改正されたことにともない、その具体的な計画である健康日本21も改訂されました。次いで2013年からの10年で第二次目標、そして来る2024年から第三次目標のもと、2035年まで「一次予防」の観点を重視した国民に対する十分かつ的確な情報提供を行い、健康づくりに関わる関係団体等との連携の取れた効率的な取組の推進等を図ることとしました。それをもって、国民が主体的に取り組む健康づくり運動を総合的に推進していくのです。

健康日本21(第三次)では、「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」がビジョンとして掲げられています。主な目標としては、以下のような項目があげられます。

❖ 各年代の健康留意事項について

➀ 10~20歳代(からだが作られる時期の終わり頃):
➡ たんぱく質、脂質、炭水化物をバランス良く食べる。たんぱく質がなければ筋肉は作れず、脂質・炭水化物は脳細胞にも重要(脳の乾燥重量のうち約60%が脂質、脳のエネルギーとなるのは炭水化物を分解したブドウ糖)。食習慣の形成という点でも社会人となって早期の行動が重要と思われる。


➁ 30~40歳代(心身の調子を充実させて維持する時期):
➡ 仕事では重要な内容を任されるなど、責任者に昇格する等の時期で仕事上のストレスは大きいと考えられる。身体的には動脈硬化や老化が少しずつ進行し始める。学生時代にやっていた運動をしなくなったり、飲酒・喫煙の継続、時間外労働が増加する=睡眠時間が削られることによる疲労の蓄積など。これらの負荷により生活習慣病が発生し始める。無理をしない範囲で食事・運動習慣の改善を図る。


➂ 50~60歳代(だんだん気になることが増え始める時期):
➡ 健康に意識が向き始める人も。しかし質素な食事になりすぎてたんぱく質不足になる例も。栄養不足による低たんぱく・低アルブミンは運動能力・体力・免疫力が下がる事態を招く。そうならないために、ささみ、魚、大豆食品等を上手く活用し、高たんぱく・低脂肪食を心がける。検査で異常が見つかったら、必ず受診へつなげる。


➃ 70歳代~(少しの不調と付き合いながら無理せず、しかし健康維持をする時期):
➡ 膝や腰、健診結果での不調の指摘などが複数出てくる頃。無理をすると回復が遅くなっているので要注意。自分の身体の声をよく聞いて、無理せず「この程度大丈夫」と侮らず。③の時期に引き続きたんぱく質・野菜他バランスよい食事と、ウォーキングなど楽しめて且つ毎日できる運動を少しずつでも継続すること。

❖ 健康とは、病気でないこと?

世界保健機関(WHO)では健康について以下のように定義しています。「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」。つまり、各時代の変化に合わせ、疾病や負傷によって損なわれにくい心身に近づくにはどうしたら良いか、日々の仕事・社会生活の中で様々な健康に関するツールや組織を上手に利用して、いかに個々人が満たされ満たし合っていくかを追求することではないかと思います。

しがたって、職域保健・健康診断においては、まずは➀仕事で負傷しない(労災にならない)仕事の仕方を実行すること、➁過剰な時間外労働をしない・させないこと、➂心理的負荷については軽減を図るないし負荷の元となる問題事を解消すること、➃各種の健康診断(定期健診・特殊健診等)で発見された異常については、きちんと精密検査を受けて診断・治療・健康状態の改善につなげていくこと、などが出来るのではないでしょうか。

 

「健康さんぽ100号」

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