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夏の体調不良と、それを予防する食事のとり方

医師 長尾 望

関東もいよいよ梅雨入りとなりしばらく経ちましたが、皆様は体調不良を感じられてはいませんでしょうか?今回は夏の体調不良と食事をテーマにまとめさせて頂きます。

■夏の体調不良 熱中症・夏バテ・食中毒

熱中症

熱中症は、高温環境の中で体を動かすうちに、体温を下げようとする働きが限界となり、深部体温が上昇して体調不良が生じることを言います。主に、発汗による脱水と塩分の喪失・体温調節機能の破綻により、めまい・こむら返りなどの筋肉のけいれん・頭痛等に加え、悪化すれば、意識障害・全身のひきつけ・手足の運動機能障害・多臓器不全などが生じるとても恐ろしい状態です。睡眠不足や、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の治療が不十分なことでも発生しやすくなります。

夏バテ

夏バテは、食欲低下による食事メニューの偏りや、冷たい飲み物の多量摂取による消化機能の低下、過剰な冷房による自律神経の乱れ、熱帯夜による睡眠不足などが長引いてくると起こりやすいようです。いくらか、熱中症の引き金とも被るところがあることにお気づきでしょうか。

食中毒

食中毒は、細菌・ウイルスなどに感染する、あるいはその毒素を口に入れてしまう場合、ふぐ毒や毒キノコなどのやや特殊な場合、薬品の誤飲の場合など、多岐にわたります。今回はそのうち、夏に多い細菌性食中毒にかかわる情報をまとめます。

細菌性食中毒には毒素型と感染型があります。毒素型は、細菌により産生された原因物質が直接身体に作用するもので、細菌が不活化されていても毒素が分解されない場合は症状が発生します。感染型は細菌が生体内で増殖することで病原性を発揮するものです。

➤毒素型食中毒の例

①黄色ブドウ球菌:毒素が耐熱のため、加熱した食品でも発症します。皮膚の傷口などについている菌が食品表面で毒素を産生しながら増殖します。3~6時間という短時間で発症します。

②ボツリヌス菌:毒素は熱で分解しやすいのですが、菌自体は比較的熱にも強く、発酵食品や真空パックの中でも育つ菌によるものです。消化器症状の後に神経症状として麻痺を起こし、呼吸困難などにより死に至るケースもあります。

➤感染型食中毒の例

③腸炎ビブリオ:6~10月と海水温が高い時が発生のピークです。海水の常在菌で、夏季に未加熱の貝や魚(刺身)を食べて発症することが多いもので、潜伏期間は12時間程度とされます。激しい腹痛・激しい下痢となります。

④サルモネラ菌:動物の腸にいる菌で卵や鶏肉に付着・混入していることがあり、自家製アイスクリームなどの菓子でしばしば原因となるものです。

⑤カンピロバクター:家畜や家禽類の腸にいる菌で、鶏肉の生食(鳥刺し、たたきなど)によることが多いです。潜伏期間が2~7日と長めなのが特徴です。また貯水タンクなどが野鳥の糞で汚染されたというケースもあります。

⑥病原性大腸菌:腸管出血性大腸菌O-157が有名です。動物・人間の糞便で汚染された生野菜、加熱不十分な食品などによるものです。腸管出血性大腸菌では、強力な毒素が産生され、2週間以内に溶血性尿毒症症候群を起こして重症化・死亡するケースも見られます。

■体調不良を防ぐ食事

 作り方、調理のポイント

①手洗い:気温・海水温が高く、細菌性食中毒が非常に起こりやすい時期です。調理をする前・食事の前・トイレの後・帰宅時などは、たっぷりの流水で石けんを使用して十分に手を洗うことを習慣づけることが重要です。手洗いは、食中毒だけでなく、新型コロナウイルス感染症を含む感染症への対策の第一歩であり、最重要なポイントです。消毒液はどうしても洗えない時のやむを得ない場合の代替策ととらえましょう。感染性胃腸炎の中にはエタノールが効かないものもあるのです。

②調理器具は清潔に:包丁やまな板は、生食する野菜に使用するものと加熱調理する材料に使用するものを分けましょう。使用後は食器洗い用の洗剤を使用し、良く洗うこと。手を拭く布巾を職場や家族で共用するのも感染拡大のもとになりますので要注意です。

③良く乾かす:食品も食器・調理器具も湿った状態は細菌が繁殖しやすいので気を付けましょう。

④保存時は低温で: 温かい状態でご飯は食べたいものですが、20~25℃は細菌が増えるのに最も適した温度でもあります。なるべく冷蔵庫で保管し、温かいものは長時間保管せずにすぐに食べるようにしましょう。細菌の中には冷蔵庫・冷凍庫の保管でも死滅しないものがあります。過信をしないこと。

⑤よく加熱する:食品の中心部が75℃以上に1分以上なるよう、しっかり加熱しましょう。時々勘違いがあるものとしては、肉そのものを切り出したステーキではなく、サイコロステーキの類です。バラバラのものを固めてステーキ状にしてあるものは、表面だけでなく内部まで細菌が混入している場合もあるようですので、レアではなくしっかり加熱しましょう。

 《 夏の食品の取り扱い》

 《 食中毒菌は無味無臭》

食材やメニューの選び方

①夏バテ予防には:のど越しが良い冷たい麺類ばかりになりやすい季節ですが、血や肉となるたんぱく質をきちんと摂ることも重要です。免疫力を高める意味でもたんぱく質不足はあまり好ましくありません。冷しゃぶ、焼き魚・煮魚、豆腐料理など、工夫してみましょう。その他、ビタミン類(野菜・果物)、香辛料などを使用し、食べやすく栄養価の高いものを選びましょう。

②熱中症対策には:血圧の高い人はバランスをとる難しさもありますが、日々の食事での適度な塩分摂取が重要です。水分だけ摂りすぎるとこむら返りが起こったり、身体のミネラルバランスが崩れ(薄まりすぎて)、それを補正しようとした身体が余分な水分を捨てるために尿量を増やしてしまい、かえって脱水が進む場合があります。3食の食事の際には、みそ汁・吸い物、ハムやチーズ、かまぼこなどの加工食品を一品加えることも考えてみましょう。(※参考食塩量:カップみそ汁2g、ハム2枚1g、6Pチーズ1個0.6g、かまぼこ2切0.6g)

 《 仕事前の朝食で水分と塩分を補給して熱中症予防》

摂取を控えたいもの

①アルコール: ビールが美味しい季節ですが、アルコールのとりすぎは利尿作用により脱水が進み、かつ下痢・二日酔いによる熱中症リスクを増やすことにつながります。帰宅後はまずビール、ではなく、水分補給をしてから楽しむ・味わうというお酒の飲み方にしましょう。

②糖分が多すぎる飲料:熱中症対策として重要なスポーツドリンクですが、糖尿病の治療中の方、これまでの健診で尿糖陽性になったことがある方(予備軍の可能性あり!)は、スポーツドリンクに頼りすぎると、血糖値が上がってしまうことがあります。スポーツドリンク、ジュース、透明な水のような製品でも甘い味がつけられているものは、OS-1等の経口補水液より塩分が足りなくかつ糖分が多い傾向にあります。また冷たい甘い飲み物を大量に飲むことで、満腹気味になる・冷えて消化機能が落ちることもありえます。そういった場合は、常温の水や麦茶と梅干(最近の甘いものより昔ながらのしょっぱいもの)で水分・塩分補給をする工夫もいかがでしょうか。

③エナジードリンク・カフェインドロップ:元気が出ないとき、ついついエナジードリンクや栄養ドリンク、カフェインドロップなどに頼ってしまう方もいらっしゃることと思います。カフェインは急速に大量にとりすぎると中毒症状(めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠、消化器系の不調)が生じることがあり、また利尿作用により脱水を進めてしまう場合もあります。その場合特効薬はなく、代謝を待つしかありません。限度量は「1日400mgまで、一度に200mgまで」(欧州食品安全機関)が目安となります。缶に記載の成分表示は100mlあたりになっていることも多く注意が必要です(一缶あたり、ではありません)。モンスターなら3本まで、と考えましょう。またカフェインドロップは500mg=12粒=一日限度量(1回4粒までで、1日3回まで)であることに注意しましょう。カフェイン飲料とカフェインドロップどちらも、という場合は、合わせてどのくらいの摂取量になっているかを忘れないようにしましょう。

■食事のタイミングと食べ方

①間食が多い:インスリンを頻繁に分泌する必要があり、膵臓をはじめ内臓に負担がかかります(糖尿病リスク増加にもつながります)。

②常に口に何か含んでいる:虫歯が増える→口内が不衛生になり、歯周病が悪化すると糖尿病のリスクが増加します(糖尿病は熱中症ハイリスクです)。

③就寝3時間前までには食べ終わろう:食物が胃を通過するには3~5時間かかります。寝てしまうと消化管の機能は落ちるうえ、胃に食物がある状態で横になると胃酸が食道に逆流し、胸やけ(逆流性食道炎)を引き起こす場合があります。注意しましょう。

④アルコールも就寝3時間前までに:日本酒1合=ビール瓶1本を代謝するには3時間程度かかります。アルコールが残っていると睡眠が浅くなります。また夜間に排尿に目が覚めてしまうことにもつながりますし、深夜0時を超えて3合以上飲んでいると、朝の出勤時に  すべてのアルコールを代謝し終わってはいない可能性もあるのです。

夏の体調不良と食事の関係、いかがでしたか?皆様のこの夏が少しでも快適なものになるお手伝いとなれば嬉しいです。健康な夏季を過ごしましょう!

「健康さんぽ91号」

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