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子宮頸がん検診について

医師 青木 さなえ

今回、「健康さんぽ」へ初めて寄稿します。平成29年11月から勤務を開始し、非常勤でありながら常勤のように居座っている(笑)私がセンターで行っていることを中心にお話ししたいと思います。つたない文章ですが、最後までお付き合いよろしくお願いします!

医師の研修システムの変遷と、その中での私
最初に、医師の研修医制度について少しお話ししたいと思います。
昔にさかのぼれば、昭和21年に、実地修練医制度(いわゆるインターン制度)が始まります。医学部を卒業した後に、1年間実地研修を行い、国家試験を受けるというものでした。インターンの時期は「免許なし」で研鑽を積むというものでした。(ブ〇ックジャックを思い出します。)
昭和43年からは卒後すぐ国家試験を行うようになり、国家試験合格者、つまり免許を持ってから2年間の研修(努力規定)を行いました。そして、平成16年度に新医師臨床研修制度が始まり、2年間の研修は努力規定から義務へと変わりました。
なぜ?こんな話をするかというと…?
私の時代は、研修は努力規定。(でも、私の年齢は不詳でお願いします。娘にもまだ秘密です。)

卒後すぐに国家試験を受け、合格後すぐに医局に入局し、研修を受けました。入った医局は第3内科。第1内科は消化器が主、第2内科は循環器が主、それ以外は第3内科。呼吸器、血液、膠原病、アレルギー、糖尿病、腎臓、不明熱!などなど。全身管理が必要な疾患が多く、また、自分の受け持ち患者さんのことは分野に関係なく自分でやる!というボスのもとでの新人時代でした。

おかげさまで、内科外科、その他含め分野に関係なく、ありとあらゆる分野の担当ができました。その当時はなんでこんなこと?と思うことも様々ありましたが、今になれば、ありがたい経験。現研修システムの若手の先生に、「なんでそれもやったのですか?」「いろいろ経験できてよい時代ですね。」などいわれる始末。

というわけで、当センターでは検診、読影と、婦人科を担当しています。その中から、今回は子宮頸がんについて、当センターでの現状をお話しします。

子宮頸がん とはどのような病気ですか?

子宮頸がんは、主にヒトパピローマウイルスの感染により、子宮の入り口付近(頸部)にできるがんです。

子宮は、中が空洞(子宮腔)の西洋梨のような形をしていて、胎児が宿るやや球形の体部(上方)と膣につながる細長い頸部(下方)からなります(図表1)

子宮頸がんは、子宮の入り口にあたる外子宮口から頸部に発生するがんです。特に子宮頸部表面を覆う扁平上皮細胞と円柱上皮細胞(腺細胞)の境界(SCJ)付近に発生し、前者にできる扁平上皮がんと後者にできる腺がんに大別され、扁平上皮がんが約8割を占めます(図表2)

子宮頸がんは女性なら誰でもかかる可能性がある病気で、30歳代後半~40歳代に多く見られますが、最近は若年者で増加しています。

子宮頸がんによる死亡者数は2710人(2016年)、子宮頸がん罹患者数10520人(2013年)(いずれも国立がん研究センターがん情報サービスのデータより)となっており、女性特有のがんの中では乳がんについで第2位で、20~30歳代では第1位です。

発症原因の多くは、性交渉などによる女性の約8割が一生に一度は感染するヒトパピローマウイルスです。このウイルスは珍しいものではなく、通常は免疫系によって自然に排除されます。

子宮頸がんの発生と関係が深いとされるハイリスクヒトパピローマウイルスは約15種類あり、持続感染により、一部が異形性(前がん病変)となり、さらにその一部が5~10年の間に軽度→中等度→高度異形性を経て、がん化するといわれています(図表3)

初期にはほとんど症状がなく、進行すると不正出血(性交時、月経時以外)、悪臭を伴った赤色の帯下、下腹部痛や腰痛、下肢のむくみなどが現れます。

子宮頸がん検診 の判定の変遷と当センターでの判定について

近年、子宮頸がんを取り巻く環境は急激に変わりつつあります。まず、細胞診の判定にはPapanicolauによって提唱されたクラス分類が長きにわたって用いられていました。しかし、世界的な趨勢をみるとクラス分類は使用されなくなり、代わりにベゼスダシステムによる細胞報告様式が用いられるようになりました。

ベゼスダシステムとは、The Bethesda system for reporting the results of cervical cytologyで、子宮頸部細胞診の報告様式の一つです。誕生は1988年にさかのぼり、当時、クラス分類を用いていた米国で、子宮頸部細胞診の精度は社会的問題となり、その解決策として生み出されました。その後、改変をくりかえし、ベゼスダシステム2001が誕生します。

① クラス分類では対応できない細胞所見への対応
② 検査技術(液状検体、ヒトパピローマウイルスの検出)の発展への対応
③ 標本状態の適・不適(細胞数が足りない、十分にスライドガラスに塗付されていないなど、サンプリング・エラーの問題)の実効
がベゼスダシステムには取り入れられています。

日本では、子宮頸部細胞診の判定に、クラス分類の一つである日母分類を用いることが主でしたが、現在はベゼスダシステム2001が導入されています。当センターでも、平成30年4月のシステム改定と同時に、ベゼスダシステムで判定を行っております。

<子宮頸がん検診 判定結果について>

細胞診の結果
(ベゼスダ分類)
略語の意味 今後の対応
NILM 陰性(非腫瘍所見、炎症) 定期検査(1~2年後)
ASC-US 意義不明な異形扁平上皮細胞 精密検査
婦人科専門医受診
ASC-H HSILを除外できない異形扁平上皮細胞
LSIL 軽度扁平上皮内病変
HSIL 高度扁平上皮内病変
SCC 扁平上皮がん 精密検査
至急婦人科専門医受診

参考:日本産科婦人科学会>Home>一般のみなさまへ>病気を知ろう>子宮頸がん
参考:日本婦人科腫瘍学会>Home>市民の皆さまへ>病気を知ろう>子宮頸癌

日本では、一般がん検診者の約1%に精密検査が必要となり、うち約10%弱に子宮頸がんが発見され、その60%以上は上皮内がんにとどまっています。平成29年度の子宮頸がん検診細胞診結果からのレトロスペクティブ(後ろ向き解析)ではありますが、ベゼスダシステムで解析したところ、当センターの結果は、日本全体の結果と同じ現状と考えられます。

これからの当センターでの検診判定について

当センターでは平成30年9月現在、細胞診の判定を「直接塗沫法」(従来法;綿棒やブラシを用いてスライドガラスに細胞を塗付、固定、染色、顕鏡)で行っています。

今後は細胞診のさらなる精度向上を図るため、「液状化検体細胞診」(Liquid-based cytology:LBC法)への変更を予定しています。LBC法では専用のブラシを用いて子宮頸部の細胞を採取し、専用の保存液に回収します。細胞の乾燥や重なりの少ない標本を作ることができるため、今までの検査よりも病変の検出率が良いことが特徴で、世界中に普及している方法です。日本国内の対がん予防協会の検診では、41都道府県で導入されており、千葉県内でも主な施設はすでに施行されています。早ければ年内にも当センターでも開始となります。受診者様へのよりよい情報提供のため、どうぞよろしくお願いします。

最後にお願い ~震災について~

ここまで、ちょっと堅苦しくなって?失礼しました。最後にちょっと皆様にお願い。

私が入局した医局は岩手。東日本大震災を経験しました。ライフラインの復旧(9割復旧)までは電気6日、水道24日、ガスは34日でした(地域で格差はあります)。
(日本気象協会HPより参考)

また、私の出身地、北海道でも大きな地震がありました。いつ、どこで、災害は起こるかわからない時代です。みなさん、どうぞ備えの確認をお願いします。そのなかで、忘れがちなのが常備薬! 震災の後にいつも飲んでいる薬が手に入らない、ということがありました。常にお薬手帳や余分の常備薬を手持ちのカバンに入れておくことをおススメします!ご安全に!!!

「健康さんぽ80号」

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