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新年度への移行は変化の節目!五月病を防いで心身の健康を維持するコツとは?

医師 長尾 望

皆様こんにちは。4月を迎え年度も改まりました。この4月から社会人となられた方々も多くいらっしゃるかと思います。新しく生活スタイルが変化することは、それが良いほうへの変化と思われるような場合でも、変化すること自体がストレスとなることがあります。

❖ストレスとなるもの

●物理的要因:暑すぎる・寒すぎる、騒音、肉体的にハードな作業等
●化学的要因:薬品等
●生物学的要因:感染症、疾病に罹患等
●心理・社会的要因:自然災害、不況、昇進、結婚、出産等の「生活・環境の変化」

❖五月病とストレスへの適応   ※医学用語ではありません

●心の症状:元気が出ない、憂うつな気持ち、不安感、物事になかなか取り掛かれない等
●身体の症状:だるくて動くのがつらい、頭痛、消化器の不調、うまく眠れない等

いわゆる“五月病”と言われるような体調不良としては、心身両面の症状が出ることが想定されます。新入社員さんなどでしばしば起こりますが、ベテラン層でも職場異動した際や生活・仕事環境が変わった後に発生することがあります。

基本的には、「4月に何らかの変化があり、理想の状態に向けて頑張っていたが、一か月前後経って疲れてきてしまった/慣れてきてホッとしたところ」というタイミングで発生した不調を“五月病”と呼んでいるのです。この場合、不調の程度が強く現れてつらくなり、本人が医療機関を受診して診断書が出る場合もありますが、重要なのはそのような不調の真っただ中で「仕事を辞める」等の決定的なことはしてはならないということです。不調の際は考え方が不安な気持ちに引きずられてしまうなど、普段だったらしないような過剰にネガティブな判断になってしまうことがあるからです。

❖五月病にならないためには?

近年実施されているストレスチェックともかかわりますが、職場で我々が受けるストレスとそれによる心身の反応と疾患の発生は下のような図であらわされることがあります。

このように考えると“疾病”に至る前に食い止めるやり方として、次のことがまずは重要です。

●セルフケアでストレス反応が生じてきにくいように心身の調子を整える。
●職場で周囲のひと(上司等)に仕事上の支援をしてもらう、家族や友人にプライベートな場面で支援してもらう。

また後程ご説明しますが、ストレスの結果として身体疾患を発症すると、さらに悪循環になって精神的ストレスも悪化するというケースもあります。したがって、セルフケアでは心理的な自分自身へのいたわりだけでなく、身体もしっかり休めるなどのケアが必要です。

❖セルフケア

●規則正しい生活を送る、睡眠時間を確保する。➡暴飲暴食・夜更かしはしない!
●ストレスと上手に付き合う(リフレッシュ)。➡それぞれ自分にあった方法を見つけよう!
●「おかしいな」と感じたら、早めに上司や産業医に相談する。

➀ 眠る前のぬるめで長めの入浴。➡入浴後は活動しないですぐに布団へ。
➁ 眠れない時にお酒をたくさん飲んで寝付くようにするのはダメ(睡眠が浅くなるため)。
➂ 寝る前には、パソコンやスマホなどはあまり見ないようにする。
➃ 朝起きたら、カーテンを開けて日を浴びる。
➄ 朝1杯の水を飲むと良い。

➀ 趣味の活動を楽しむ。(とても遠方まで旅行する、友人と大騒ぎする、等の著しく体力を消耗 するリフレッシュ方法はタイミングを見計らうこと。疲れているときにやってしまうと、疲労の悪化でむしろ不調になるケースもあります。)
➁ 休憩中など仕事の合間に軽い運動をする。
➂ 疲れているときは、昼休みに短時間(15~30分程度)の仮眠をする。

ひとりで悩みを抱え込まない&相談された方も抱え込まない。➡医療従事者へつなぐ。

❖不調とアルコール

アルコール摂取に問題ありと思われる人の人数はどのくらいいるでしょうか?依存症82万人、大酒家(5合/日×10年間)220万人いると考えられています。女性のほうが男性よりも少ない飲酒量、短い期間で依存症になるようです。

CAGEテストは、アルコール依存症を4項目で判定する簡易的なテストです。チェックの結果はあくまで目安です。要注意の場合には早めに受診しましょう。
➀ 酒の量を減らさなくてはまずいと思ったことがある(Cut down)。
➁ 自分の飲酒のことで他の人から批判され、余計なお世話だと内心思ったことがある(Annoyed by criticism)。
➂ 自分の飲酒のことで気が咎めたことがある(Guilty feeling)。
➃ 気持ちを落ち着かせるために朝起きると真っ先に酒を飲んだことがある、または二日酔いを抑えるために迎え酒をしたことがある(Eye-opener)。

➀ 依存症:渇望/量のコントロール不能/耐性/離脱症状/酒が中心の生活になってしまいます。
➁ 多量飲酒による脳の委縮と機能低下:
▶特に人格、意欲や創造性にかかわる前頭葉の委縮=問題解決能力低下、眠る機能が低下してしまい、社会的な機能が落ちていくと考えられます。
➂ うつ病との関連:
▶高率にうつ病を合併する=合併は一般の人の3.9倍、自殺リスクは6倍!とかなりのハイリスクです。

❖お酒の飲み方について

【体重60~70kgのひとと仮定して】
➀ 飲んだアルコールを肝臓で分解できる量=「1時間当たり9~12ml程度」
➁ 日本酒が15度(15%)とすると1合(180ml)の中に=180ml×0.15=27mlのアルコールが含まれています。

したがって、
▶日本酒1合の中のアルコールを分解するには27÷9=3時間かかる!
▶朝、車で出勤することを考えると、飲み会などで2~3合飲むような場合には分解に6~9時間を要する(個人差あり)ため、日付をまたぐ前に飲み終えるようにしましょう!!!

❖生活習慣病と心の健康

「生活習慣病」= 生活習慣が発症原因に深く関与していると考えられる疾患の総称で、糖尿病、高血圧、脳卒中、心臓病、痛風、脂質異常症等をさしています。

【生活習慣病と心の健康のかかわり方】
➀ 同一の生活習慣によって生活習慣病と精神障害をきたしている場合
▶アルコール多飲に伴う糖尿病、高血圧など。➡ うつ病や睡眠障害などの合併。
➁ 精神障害に罹患することで生活習慣が変容し、その結果として生活習慣病に陥っている場合
▶精神疾患の罹患そのものと治療により肥満。➡ 糖尿病、高血圧などの合併。
➂ 生活習慣病によって直接精神障害に至る場合
▶糖尿病、高血圧により脳卒中。➡ 脳血管疾患による認知機能の低下やうつ病などの合併。

ですので、日ごろの健診の結果はお手元に届いたら必ずよく見ていただき、自身の健康状態を把握して生活習慣改善を始めましょう!心と身体はどちらも“私”です。どちらも大切にしましょう!

「健康さんぽ98号」

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