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正月料理から考える栄養バランス

医師 小倉 康平

あけましておめでとうございます。皆様、年末年始をいかがお過ごしでしたか?家族や親戚が集まったり、友人たちとパーティーをしたりと楽しい時間を過ごされたのではないかと思います。そんな中で、ついついお酒を飲み過ぎてしまったり、食べ過ぎてしまった、という方もいらっしゃるのではありませんか?今回は正月料理の栄養バランスを分析し、今年一年の食生活改善の抱負を立てていただければと思います。

栄養バランスのおさらい

まずはバランスのいい食事についての基本事項を復習してみましょう。農林水産省が右のような「食事バランスガイド」を提示しています。ごはんやパン、麺類などの炭水化物を中心とした主食、肉や魚、卵などタンパク質や脂質が豊富な主菜、野菜やきのこなどを使った副菜、牛乳や乳製品、果物、そして水分。これらを日々バランスよく摂取することが推奨されています。摂取エネルギーという側面から見てみると、炭水化物で50~60%、タンパク質から20%、脂質から25%というバランスが適しています。

しかし、ただバランスが整っていることだけが大事なわけではありません。栄養の偏りや品目を心配するあまり、食べることが楽しくなくなったり、ストレスになってしまうのは悲しいものです。家族や友人と楽しく美味しく食べること、それによってコミュニケーションをとったり日々の幸せを感じることもまた、食べ物が持つ大切な心の栄養源と言えるでしょう。

正月料理の特徴

お正月に食べる料理といえばお雑煮やおせち料理。見た目美しく、普段は滅多に食べられないごちそうの数々はお正月の主役の一つですよね。一般的なおせち料理は、多くの場合は三段重ねの重箱に入っています。早速、中身を見てみましょう。

一の重は甘い味付けが中心のオードブル。子供たちにも人気の栗きんとんや黒豆、伊達巻をはじめ、かまぼこや数の子などが入っています。栄養という側面から見れば、糖類、とくに砂糖を多く使った料理が目立ちます。たとえば、栗きんとんは2口(70g)で166kcal。黒豆も10粒(30g)で60kcal、伊達巻は一切れ(40g)で78kcalと、意識しなければすぐ砂糖の摂り過ぎになってしまいます。箸休めとしてそれぞれを少しずつ味わうのが良いでしょう。最初に取り分けてから食べるのも一手ですね。また、比較的カロリーの低いかまぼこや数の子、ごまめやこんぶは、塩分に注意が必要です。かまぼこ二切れ(25g)で0.6g、数の子は一切れで0.2g、ごまめは三口(15g)で1.0gの塩分を含みます。お酒のあてにとダラダラと食べるのはよくありません。

二の重には酢の物が中心です。紅白なますをはじめ、野菜や魚介類の酢の物は塩分・糖分ともに控えめで、積極的に食べたい料理が多いです。

そして三の重。煮物、焼き物などメインディッシュが詰まっています。味付けは塩分がやや多めにはなりますが、タンパク質や野菜を多く摂れるメニューですね。

あれ?忘れているものがありませんか?そう、お雑煮です。筆者の出身は奈良県。昆布だしに白みそベース、お餅に海老芋(粘り気の強いサトイモのような芋)、金時人参、雑煮大根、そして丸餅が入り、最後に鰹節をぱらぱらと。筆者の大好物であり、これが楽しみで正月を迎えると言っても過言ではありません。ただ、この雑煮、栄養から見ればやはり偏っている面があります。

まずはお餅。見た目にはそれほど大きく見えませんが2切れ(100g)でお茶碗一杯150gのごはんと同じエネルギー(240Kcal)です。そしてお味噌。とろみがつくほどに味噌を溶かし込みますので、やはり塩分は多くなります。

もとは保存食という側面も持っていた正月料理。砂糖や食塩が多く使われており、いわゆるヘルシーな「和食」とは少し異なります。

正月料理の食べ方ポイントをまとめてみましょう。
①お餅の食べ過ぎに注意!▶▶▶一食の目安は2~3切れです。
②甘いおせちは控えめに!▶▶▶砂糖を多く使う料理は箸休め程度にしておきましょう。
③野菜料理をプラスしよう!▶▶▶サラダなどフレッシュな野菜をプラスしてバランスをとりたいものです。
そして最後にもう一点、
④だらだらと食べない!▶▶▶お正月は日々の生活とは時間の流れ方が違います。

朝は初詣の混雑を避けるために4時から初詣。神社の近くで温かい七草粥と甘酒をいただきます。帰って2度寝をし、11時ごろに起床。お餅3個入りのお雑煮とおせち料理を7~8品。夕方には小腹がすいてティータイム。クッキーやケーキを食べてしまいます。夜は親戚が集まって宴会ですね。ビールにすき焼きなんていいですね!書いてみると、なんともだらしのない一日ですこと。これで約2600kcalを摂取しています。ゆったり過ごす一日としては食べすぎですね。家族や親戚、友人が集まり、話がはずめばどうしても食事がだらだらと長引いてしまいます。お酒を飲みながら夜遅くまで食べるのも健康という側面からはNG。初詣などのイベントに出かけてみてはいかがでしょうか?

お正月の過ごし方

折角ですので、筆者おすすめのお正月の過ごし方を少し紹介しましょう。実はお正月というのは、ダイエットのチャンスでもあるのです。たとえば、親戚が集まった際にはぜひ子供たちと遊んでみて下さい。子供たちと小一時間、鬼ごっこなどをして走り回れば、消費カロリーは約250kcal、生ビール中サイズ一杯分のエネルギーを使うことになるのです!しかも、奥様や親戚の皆様からの好感度も上がって一石二鳥です!他にも、大掃除(4時間で約800kcal)、初詣(3時間で約400kcal)、福袋争奪戦(2時間で約250kcal)などなど、身体を動かすイベントも盛りだくさんです!ぜひ来年のお正月は外に出て楽しんでみて下さい。

みなさんのお正月はいかがでしたか?

ここまで語ってなんですが、私はお正月くらい、ついつい食べ過ぎたり、飲み過ぎたりしてもいいと思っています。一年のうちの数日くらい、羽目を外して楽しんでもいいじゃないですか!それよりも、一年をHAPPYにスタートする方がよっぽど大事。大切なのは、これを機にこの一年の日々の食事について考えること。普段の食事に栄養バランスという視点を加えること。

日々の食事と特別な食事、メリハリをつけて、健康で充実した一年を過ごしてくださいね!!

「健康さんぽ73号」

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