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重症熱性血小板減少症候群について

今回は、野外のマダニを介して感染するとみられる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)についてお伝えいたします。

疾患名:重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome)。

病原体:SFTSウイルス。2011年に特定された新しいウイルス。

症状:(原因不明の)発熱、消化器症状(食欲低下、吐き気、おう吐、下痢、腹痛)が中心です。

時に、頭痛、神経症状(意識障害、けいれん)、出血症状(あざ、下血)などが出ることもあり、重症化して死に至ることもあります。

発生状況:中国で2009年に7つの省で症例が報告され、米国でも似たウイルスによってSFTS同様の症状を起こした症例が2例報告されています。日本国内ではこれまでSFTSの報告はありませんでしたが、2012年の報告以降、過去にさかのぼって、SFTSウイルス感染が原因とされる死亡例の報告が出ています。現在までの報告では致死率10%程度とされています。

感染経路:フタトゲチマダニ等のマダニに咬まれることによるとされています。また、感染患者の血液・体液に触れたことによる感染も報告されています。感染したペットからヒトへの感染は報告されていません。マダニは家の中にいるダニとは種類が異なり、固い外皮に覆われた比較的大型3~4mm(吸血後は10mmにもなる!)のダニで、主に森林や草地など屋外に生息しています。日本では全国的に分布しており、市街地の屋外でも見られます。春から秋に活動が活発になります。

潜伏期間:マダニに咬まれてから6日~2週間程度です。

予防方法:屋外でマダニに咬まれないようにすること。草むらや藪などに入る場合には、長袖・長ズボン・足を完全に覆う靴を着用し、肌の露出を少なくすることが大切です。屋外活動後にはマダニに咬まれていないか(マダニが付着していないか)を確認してください。マダニ等に咬まれることによって感染する他の病気の予防にもつながります。

また、哺乳類では感染は認められるものの、発症は確認されていません。しかしながら犬や猫を飼っていて屋外に出すことがある場合には、マダニよけの薬を定期的に使っていたほうが良いでしょう。

咬まれた時:皮膚にしっかりと口器を突き刺しており、無理に引き抜こうとするとマダニの一部が皮膚内に残ってしまうことがあります。気が付いたときはなるべく病院に行きましょう。また、咬まれた後に体調不良になったときも病院を受診しましょう。飛沫感染や空気感染の報告はありませんが、血液・体液に触れての感染はありますので、触れないようにしましょう。

フタトゲチマダニ(右は血液を十分吸って膨らんでいる)
(厚労省HPより)

治療方法:有効な抗ウイルス薬などの特別な治療法はなく、現れている症状に対しての対症療法が主体になります。中国ではリバビリン(C型肝炎の治療などにも使われる抗ウイルス薬)が使用されていますが、効果は確認されていません。

ワクチン:いまのところありません。

<参照>
厚労省HP「SFTSについて」 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts.html
国立感染症研究所HP「重症熱性血小板減少症候群」 http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/sa/sfts.html

「健康さんぽ58号」

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