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健康コラム君津健康センターの医師・スタッフから、
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長寿社会と健康寿命―いかに最期を迎えるか―

医師 三浦 正巳

あけましておめでとうございます。西暦2020年、令和2年を迎えました。君津健康センターも今年で創立32年を迎えます。大過なく、新年を迎えることができました。ひとえに皆様の努力のおかげです。感謝の念に堪えません。ありがとうございます。

日本は世界で最長寿国のひとつです。病気の診断、治療については確実に進歩しています。寿命が延びたのもこれらの進歩によるところが多いのも事実です。われわれは健康診断、保健指導、環境測定、産業医業務等、主に予防医学に関わっています。予防医学の進歩も寿命(健康寿命を含め)を延ばしたことの大きな要素と思っています。

私は長い間、臨床医をしてきました。多くの患者さんの死に立ち会ってきました。日本ではまだまだ病院で亡くなる方が多く、それも胃瘻(いろう)を作ったり、中心静脈栄養で寝たきりで何年も過ごす方、人工呼吸器を長期間使用している方がいらっしゃいます。それが本当にいいことかどうかはわかりません。

私は病院で長期間苦しんで死ぬのはごめんです。できれば自分の家で、苦しまずに死にたいと思っています。

尊厳死、という言葉があります。不治の病で末期となった時に延命処置をしないということです。その際、苦しみをとるためにモルヒネを使いますが、日本では欧米に比べ使用量がけた外れに少ないのです。最近大阪の病院で肺がん末期でモルヒネを使用、モルヒネ中毒が死因の疑いで警察が捜査に入るということがありました。これでは医師は業務上過失致死罪に問われ、十分使えません。また人工呼吸を外すと殺人罪に問われます。また、自宅療養で尊厳死を希望された方がいて、苦しそうなので家族が救急車を呼び、救急隊が蘇生をしなければいけなかったこと等、これでは臨死の際の医療は延命方向に行くしかなく、患者さんの希望は聞いてもらえない状況が続きます。

善悪は別ですが、欧米には「食事の介助」という概念は存在していません。そういう言葉はないのです。介護ホームはありますが、そこでも食事は自分で食べられなければそれで終わりで、下げられてしまいます。点滴すらしません。その代わりモルヒネを十分に使い、苦痛はとっているのです。実際の現場の声を聴いて、安楽死、尊厳死を含め、法整備を国にお願いしたいと思っています。

すみません、暗い話になってしまいました。今年も皆様と仲良く、仕事をしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

「健康さんぽ85号」

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